Key開発日誌(yucchi)
前回の続き
そして撮影クルーはとある秘境に足を踏み入れた。
ここの原住民たちには古来よりグラフィッカーの生きた心臓と右手を神に捧げるという祭りがあるという。
だが野生のグラフィッカー達はしたたかに人間社会に紛れ込んでおり見つけるのは難しい。
今日はそのグラフィッカーを罠にかけ捕獲するという行事に運よく撮影クルーが参加できる事となった。
【神官】「貴様!グラフィッカーだな!!」
【村人】「ち、違いますよ!」
一人の男が神官と我々の前に連れてこられた。
果たして彼がグラフィッカーなのだろうか。
見たままだと普通の人間の青年にしか見えないが……
戸惑う撮影クルーを前に神官が尋問を始める。
【神官】「ほう……ではこのシースルーを5分で塗って見せよ!」
そう神官が述べると古びたパソコンとCRTディスプレイ、板タブレットが村人の前に置かれる。
【村人】「ええ……何このデカいテレビ……それにシースルーの半透明なんてどうやって塗るんだよ……」
【神官】「ほれ、どうした……早く塗らぬと飢えた亡者たちがマゼンタ欲しさに貴様の生き血をすすりに来るぞ」
【村人】「くそっ! どうすれば……あ! そうか普通に塗った後にこのレイヤーの不透明度を下げれば半透明になるぞ!」
何かをひらめいたのか軽快にペンを走らせる村人。
果たしてこの男はグラフィッカーなのだろうか……
撮影クルーに緊張感が走る。
【神官】「ほう……どうやら校了したようだな」
【村人】「はい! この不透明度の機能を使えば思った以上に簡単に塗れました!」
【神官】「なるほど……よし! こいつはグラフィッカーではない! 行っていいぞ」
【村人】「え、あっはい」
どうやらこの男はグラフィッカーではなかったようだ。
我々には神官の儀式の意図がまるで分らないがこれは何か占いのような奇術の一種なのかもしれない。
そうしているうちに次の男が連れてこられた。
【?】「離せ! 俺はディレクターだ! グラフィッカーじゃない!!」
【神官】「ふん、また口から出まかせを……」
【?】「本当だ! 見て見ろ名刺にだってどこにもグラフィッカーって書いてないだろ!!」
【神官】「まあいい、じきにわかることだ」
先ほどと同じように彼の前に古びたパソコンとCRTディスプレイ、板タブレットが置かれる。
【?】「え……これ三菱のダイヤモンドトロンじゃん……まだ動いてるのか……」
【神官】「なにか言ったかね?」
【?】「い、いえ……何も」
【神官】「ではこのシースルーを5分で塗って見せよ!」
【?】「5分で!?」
【神官】「何か問題でもあるか?」
【?】「バカいうな! このシースルーひだが波打ってて多層になってるんだぞ!」
【神官】「Photoshopの不透明度機能をつかえばよかろう……何を戸惑う必要があるのだ」
【?】「何言ってんだ! 重なる層の数によって不透明が変わるんだぞ! Photoshopの不透明度だけで対応できるわけないだろ!
それにシースルーは布でビニールのような素材じゃない! 皺や影だってしっかり落ち……はっ!」
【神官】「ふふ、ついにしっぽを出しよったな……」
【?】「ち、違う!お、俺は……グ……G、Grrrrr」
【神官】「グラフィッカーがいたぞ! 皆の者この男をとらえよ!!」
神官の一言で控えていた兵士たちが集まり男を拘束したかと思うと手際よく神殿の方に運んで行った。
撮影クルーも彼らを追うべく神殿へと向かったがここからの撮影は許可が下りなかった。
神殿の方から獣ような唸り声が聞こえるが、何が行われているのかは我々にはもはや知るすべはない。
近年、レッドリストへの追加も考慮されているグラフィッカー。
しかし我々が目撃したような奇祭に対する無形文化財保護の観点もあり、今でもグラフィッカーをめぐっての論争は続いているとかなんとか
(これは全部yucchiの妄想です。あとシースルーの多層を頑張るのはほどほどにね! ではまた次のブログで~)