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2009年8月 アーカイブ

2009年8月 7日

開発日記其の五拾参

随分間が空いちまいました...ごめんなさい。
開発日記は書いてなかったけど、一番開発してる日々を送っています。
先週、最終回である第13話の脚本の第一稿をプロデューサーにお渡しした。
ついに終わった...
おれの長い長い、脚本執筆作業が。
...感無量。
大きな山を越えた。
プロデューサーからも、おめでとうございます!と労われる。
これからは本読みで出てきた修正箇所を修正していくだけだぜ!

そして、SSの執筆と平行して作曲を再開する。
それがですね、奇跡的な日々が続いているんですよ...
一番時間がかかるだろうな~と思っていた、挿入歌がするっと書けた!!(時間にして約4時間)
まさに「舞い降りた」感覚だった。
また伴奏の上に適当に音を置いていく作り方をしてたんだけど、一発で決まった。鳴らした瞬間にこれだ!とグッドメロディの手応えを掴んでいた。
AメロもBメロもいい感じで、ボーカルラインをピアノの音に置きかえるだけで、美しいインストナンバーになる。
AIRでいうところの「銀色」が出来上がってしまうのだ。
まさに、「青空」と「銀色」を同時に手に入れた感じだ。
音楽でも大きな山を越えた。
これで一安心だ...。きっと感動的な演出になる。
その後も、一日一曲というペースでガルデモ曲を書き上げていくという、快進撃が続く。
本編でかからなかろーが、シングルで出したいぐらいのキラーチューンも出来たので、是非リリースを実現したいな...。

で、G's連載のSS(続きものだけど)ですが...。
いつものようにプロットなしのまま書いていくので、とにかく書きためておかないと不安で仕方がない。
後から、第一話に戻って直したくなるかもしれないし。(おれは素人か!)
なので、2日の休みを申請し、お盆休みを10日間の連休として完成させ、実家に缶詰になり、全話を書き上げて帰ってくるという無謀な計画を立てる。
でね...
やっぱポメラすげーーーー!!
コンスタントに一日10キロ進むのね。
二日で一話完成するペースで、第二話も完成させる。
しかも(自分で言うのもなんだが)面白い!!(と思うよ!!)(多分ね!!)(あなたに合うといいね!!)
で、これ言っちゃっていいのかなあ...
放映前に、戦線のメンバーが全員揃い、主人公がこの世界に現れる前夜までを書こうとしたのだけど...
絶対無理!!
そこまで書こうとしたら全25話とか、とんでもない量になる!
放送終わっても、まだプレリュードの連載が続いてる...みたいな(汗
かといって、いきなり放送合わせで都合良く全員が揃う、という展開には決してしたくないですね、という話になり、まあ、マイペースで行くということに(汗。
とにかく、面白いお話をひたすら書き連ねていくことにした。
とりあえず、放映前にはなんらかの形で話は一度終わらすと思うけど。
その後のことはまだわからない。

どーでもいいが、今、CDを再生しようとして、リモコンと間違えてニベアを掴んでしまった。
会社でも、マウスと間違えて、饅頭を掴んでしまったりしたことがあるんだけど、そういう時、リアクションに困るんですよね。おれ、個室だから。
隣に誰か居たら、「うわ、おれ、今マウスと間違えて饅頭掴んじまったよ! そりゃ似てるけど!」とか笑いの種としてアピールできるじゃん?
でもね、ひとりで、マウスと間違えて、饅頭を掴むとね...
人は苦笑いしか漏れないのね(汗
自分を自分で笑うしかないのね。
何してんねん! そりゃ似てるけど! みたいな話ですけど! みたいなことをひとりで己に突っ込むわけですよ。
すげーーーー侘びしい。
これは多分あるあるネタで、みなさんもひとりの時に、マウスと間違えて饅頭を掴んでしまった時の、衝撃的な瞬間なのにそれを訴える相手がいない、自分を自分で笑うしかない持てあまし感を覚えたことがありますよね?

で、今月後半は、レコーディングラッシュ!
六曲ぶんのレコーディングが行われるのだ。
出張しまくりに。ひー!!
ハモリパートをまだ作ってなかったので、実家からSS合宿を終えて帰ってきたら、すぐさまそれに着手せねばならない!

それからはあれですよ...
殺伐ラジオの第二回の台本作成ですね。
みなさんのお便りをできるだけ読み上げていきたいと思ってます。

で、その殺伐ラジオ第二回のゲストに、なんと...

あの...

中川くんをお呼びします!! どがーーーーーーーーーーん!!

ここのブログをずっと読んでないと、え? 誰?ってなる(汗
まーおれの大学時代からの友達で、おれにオタク文化を教えてくれたオタクの師匠であり、共に音楽制作をした仲間であり、おれが働き始めてからは良きアドバイザーであり、2年前から務め先のTSUTAYA(!)で知り合った女の子と同棲を始め、今年35歳という年齢にも関わらず無謀にも仕事を辞め、先々月にみごと再就職を決め、つい先週結納を終え、結婚を果たそうとしている人物です。
で、どーしてこの話が実現したかというとですね...
すでに届いてるラジオへのお便りがですね、中川くんネタだらけだったんですよ。みんなふつーに中川くんに挨拶してるし(汗
現在配信中の戦後処理で、おれとプロデューサーが一緒にあれだけいじっちゃったせいもあるんだけど(汗
なので、呼ばないと、そもそも番組が成り立たない!という事態になっちゃったんですよ。
みなさんのおかげでもあります。ありがとうございます。
でもですね...冷静に考えると、彼、一般人ですよ? AB!とはなんの関係もないんですよ?
そもそも原作者ひとりだけのラジオというのも前代未聞なのに、そこに加えて、そいつのただの友達がゲストですよ?
大丈夫なんでしょうか(汗
で、ここからが今回のキモなんですが...
まだお便りは間に合います!
是非中川くんに対する質問もお寄せください!
応募フォームはこちら!
おれの過去を知る唯一の人物です! 聞きたいことがあったら聞いてみてください。すごい裏話とか出てくるかもしれません。
35歳からの再就職活動の秘訣とか聞くのもいいかもしれません。結婚観とかも大アリです。むしろおれが直に聞く。
そして、番組内では、なんと! 12年前に彼と組んでいた幻の音楽ユニットKIMELLA(キメラ)の1stアルバム「KIMELLA」から、何曲かかける予定です!! どがーーーーーーーーん!!
配信をお楽しみに。(なんの番組だ!! フリーダムすぎる!!)

今月末発売のG'sマガジンに、インタビューとボーカルオーディションの様子が載ります。
そちらもチェックよろしくお願いします!

2009年8月16日

開発日記其の五拾四

というわけで、前回お伝えした通り、このお盆休みは実家(三重県伊勢市)に缶詰になり、Angel Beats!SS全話を書き上げて帰ってくるという無謀な挑戦を行ってきました。今回はその日記です。

8/9
帰省しました。
SS合宿の始まりです。
移動があったので夕方から執筆を開始したのだけど、 たった今、一日のノルマの10KBを書き上げた!
初稿をポメラで打ち、ノートで仕上げる、といった形。
マジでこの休みのうちに全話書き上げられるかも!
すげーーーー!!

8/10
書きあがった~!
第三話が~!
今日は10KBのノルマこなすの無理だと思ったね。
夕方まで父親とwiiで卓球して遊んでたし。
で、夕方から焦って続きを書き始めた。
二日目は自動的に話をまとめる日になるから、これほんとにまとまんのかあ?と疑心暗鬼になって書いてた。
なんとかまとまった...。
まだ面白さはキープしていると思う。
だが、書いてて、ほんと、どこに突き進んでるのかさっぱりわからん。
どーなるんだ、これ...(汗
もちろん第四話はどうしようかなんてなんにも考えてません。
でもまた明日、その半分を書き上げるんだよなあ...。
なかなかに過酷な日々だ...。

8/11
22時に今日のノルマ10KBは終わった...。
夕方に3KBしか書けてなくて焦ったけど、そこからばりばり書いたね...。
今、12KBに達した。
日曜は移動だから、実質残り五日なんだよね...だから貯金が欲しい...。
しかし、すげーーーしんどい...。
まだ三日目なのかーー...
後この生活が五日も続くというのかー...
あまりに体がしんどいので、明日は近くのマッサージに行く。
電話で聞いたんだが、たまたまそこにはおれのような体のしんどさに効く治療法があるのだという。
酸素がどーとか言ってたから、酸素カプセルにでも入れられるのかな?
例の斎藤佑樹投手が甲子園で投げてる時に入ってたやつですよ。
ネットで調べてみると、確かに効果的らしい。
今の敵はこの体のしんどさだけなんで、もしこれで改善されたら、ちょっと生活変わるぜ?
もりもり書けるぜ?
期待しておこう。

8/12
ふあああぁあああぁぁぁああーーー!!
今日も10KB書いたーーーー!!
第四話が完成したーーーーー!!
まだまだ面白さはキープしているぜ!(と思うよ? 楽しみにしててね!)(合わなかったらごめんなさい!)
しかしよくもまあ、おれはまるでプロットを書いてちゃんと考えていたかのように、話を書けるなあ。
自分で驚くぜ...。
しかしそろそろ気がおかしくなりそうだ......
疲れたよ...
二日に一話完成させていく日々なんて...

今日は体も強烈にしんどくて...
起き抜けから、体を起こしていられなくて、無理だ、書かれん...と思った...
で、行ってきたんですよ、地元の自転車で約10分のところにあるマッサージ屋に。
『つぼ家「治療院」TSUBOYA 』
というのが正式名称らしい。
すげーよく喋る、治療とは関係のないどーでもいいことまで聞いてくる、愛想のいいおっちゃんがひとりで経営していた。
酸素カプセルじゃなかった。
ゴッドクリーナーという機械だった。
ぬるま湯が入ってて、そこに約30分足を浸すのね。
足の裏から体に溜まった毒素や老廃物が出るっつーしろもんなのだけど...
すげーー出た!
気持ち悪いぐらい出た!
俺の場合、ただの塩水が茶色く濁りヘドロ状のアクまで浮く、写真さえ掲載できないようなグロイ液体と化した。
で、これやってる最中におっちゃん(先生)と話し合って、今は頑張り時だから、とことんまでやっほしいと頼むと、今度は別の機械を使って、光線療法なるものまで受けた。
足の裏と膝の裏とお腹と背中に光を浴びる。
ただ、この治療法は最低三回ぐらいは受けないと効果は現れないらしい。
それぞれ三千円なのだけど、最低三日は通うことを約束すると、さらにマッサージ付きで一回五千円にまけてくれた。
「契約成立!」
とおっちゃんは口にして言った。ザッツオール!的に。
明日はおっちゃん富士山にのぼりにいく予定だったのにおれが引き止めてしまった形になってしまった(汗
でも時間にして二時間以上も居座ってこれらの治療を受けて、一回五千円は実際破格だと思う。
マッサージも上手かった。特に足。今まで揉んできてもらった中で一番気持ちよかった。
そう言うと、ますますやる気が出ますわ、なんなら大阪まで出張しまっせ!とおっちゃんは冗談混じりに喜んでいた。
治療中のBGMは、宇多田ヒカルとB'zだった。稲葉氏がビュンビュンほとばしるとか、ミヤビなスプラッシュ!とか歌ってる中で揉み揉みされてるのは一種シュールな空間であった。
足から毒素だした時点では、ぜんぜん体のだるさは緩和していなかったのだけど、すべてが終わる頃にはすっきりしていた。
素晴らしい!
ただ、夜になるとまたぶっ倒れるほどしんどくなってきたが...。
明日、明後日と行って、よくなっていくといいのだが...。

8/13
ふわああぁあああぁぁああぁーーー!!
今日もなんとか10KB書いたあーーー!!
ほんと今日は無理だと思った...
あまりに体がしんどかったから...
でも四話まではそこそこ満足できる出来だったけど、五話は納得いかーーーん!
今までじっくりと描けてきたのだけど、 五話は話が駆け足すぎ!!
やっつけ感が漂い始めた...
なので、明日大幅に書き直すかも...
でも今日のノルマは達成ということで、もう休む...

今、午前2時。
流星群が見られるらしくて、外に出たのだけど、まっったく星が見えない...
昔は満天の星空が見えたのになあ...
空が曇っているのか、おれの視力が落ちたのか...

寝る。

8/14
ふわああぁあああぁああぁーーーー!!
今日も10KB書いて、第五話を仕上げたあーーーーー!!
なんだ、この展開!? どうやって収まりつけるんだあぁぁーー!?
なんて辛い日々なんだ...
ダメ、もう死ぬ...。
ゲロゲーロ...

治療院も三日目。
足から毒素は相変わらず出続ける。むしろ、初日より濃度は濃い。どれだけ俺は毒素を体に有してるんだ。

甲子園では、母校三重高が劇的サヨナラ勝ちを収めていた。

8/15
なんとか+11KB。
体のしんどさが取れてきた気がする。三日連続で続けた、ゴッドクリーナーと光線療法のおかげか?
本当は今日も行く予定だったのだけど、仕事に集中したかったので、電話でキャンセルした。おっちゃんとはお別れは会ってしたかったけど、電話で済ませる。暑いけど仕事頑張ってくださいな!と励ましてくれた。

SSを掲載するG'sマガジンの編集のコアラさんが休みの間もずっと付き合ってくれて、出来たテキストを送ると、すぐ感想を返してくれる。それが今の唯一のモチベーションになっているので、ほんとにありがたい。

俺は昨日送った第五話はどうかなあ?と思ってたのだけど...
> 僕は5話すごくよかったと思いますよ。
> 最初のギャグっぽい掛け合いもいいし、
> ○○に○かれるところも、○○○っぽくなってきた感じがあっていいですし。
> ○○を○って、はしゃいでいるゆりっぺとか、すげーかわいいですし、
> それを○○に○○ところなんかは、とてもいいシーンだと思います。
> 挿絵にしたくなるようなシーンがたくさんあって、
> 一気に読めました。
> あくまで一読した感想ですが、
> すごくおもしろかったです。
とべた褒めで、それが編集さんの作家のモチベーションを上げるためのスキルなのだとしても、まんまとやる気が湧く。
単純に嬉しい。

明日は第六話を完成させる。そして明後日は大阪に帰る。
最終話は、結局会社で書くことになるな。
それよりも、月曜からは再来週から始まるレコーディングに向けて、ガルデモボーカル曲五曲にハモリのコーラスラインを作り、そのコーラス譜まで作らなければならないのだ。
二日あれば終わるかなあ?
そもそも俺が作るハモリラインって微妙なんだけどね(汗
音感なくて編曲できないぐらいだから、音をぶつけてしまう危険性を孕んでいるという...。
昔、学生の頃、THE BOOMのハモリラインを研究したことがあるんだけど、すごいのね。
「川の流れは」という曲の二番のAメロのハモリが特にすごくて、どういう理論に基づけば、こんなラインが生まれてくるんだ?というもので...その美しさたるや。
あの時、「ハモリは深い」と感じたんだよね。
でも、俺は音をぶつけないのに精一杯。

AB!のOPとEDのアレンジのリテイクが届く。
向こうも相当悩んでるらしい。
とりあえず1コーラスだけが届く。
まさに探り探りだ。
ふーーーーーーーーむ、こう来たか。なるほど...。
バンドサウンドを排除し、おもいっきしミニマルに振ってきたのね。
アリはアリだが、主題歌としては、ハードルが高い。
まずAメロの出だしの拍が取れないんだもの!
悩んだ末、さらに修正をお願いした。
こっちもどうなるか、ドキドキもんです。

8/16
今日は第五話を修正し、第六話を+4KBし、完成させる。
まだどう終わるかわからないけど、第五話の修正により、俄然まとまる気がしてきた。
なので量にするとたったの4KBしか進んでないが、それ以上の収穫があった最終日と言えよう。

さらに帰りの電車の中で、ポメラをだし(ポメラすげー! どこでも書ける!)、最終話も書き始める。
む...!
見えた! 終わる! 完成させられる!
そんな手応えを得て、ポメラを閉じ、大阪に着くまで休んだ。
 

200908081529363.jpg
(電車の中から)

こうして、この夏のSS合宿が終わった...。
とにかく疲れた...。

今のBGMは、AB!で使用する楽曲のデモ。自分で作ったピアノインストにしてあるバージョン。
この曲は泣けるなあ...。
無駄にこの盆休みがかけがえのないものだったと思えてくる...。
G'sの編集のコアラさんとふたりで頑張った日々として感動的に彩られる...。
(あと治療院のおっちゃんも。『Angel Beats!SS ~コアラさんとボクと、時々、治療院のおっちゃん~』というタイトルでちょっとした話が書けそうである)
無駄じゃなく、本当に楽しんでもらえるといいなあ!

実家にはDSも持ってったんだけど、まったくしなかった。
休憩時間は何してたかっていうと、ずっとライトノベルを読んでた。
苦手な小説を書くための合宿だったので、世の評価の高いライトノベルに触れ、刺激をもらい、士気を高めるためである。あと、文章能力が読んだ直後の一瞬でも付け焼き刃的に向上せんだろーか?という浅はかな考えもあった。
(おれの文章はセリフ以外はほぼ、~を見た。~と言った。~を見て言った。の三種類のバリエーションのみで構成されている)
休みの間にこれだけ注文した。
 

200908161711074.jpg
 

上半分を読み終えた。二日に一冊読むペースだった。
これまで一冊にかける時間が数ヶ月スパンだった俺からすればなんて早いんだ!
それほど夢中になって読み漁ったということだ。
おかげで大変励みになった!

2009年8月23日

開発日記其の五拾伍

金曜が本読みでした。
第十二話でした。
クライマックス!!
もうすぐ本読みも終わる...!!

第三話の絵コンテを頂く。
これも感動!!
でも、なんと...4分もオーバーしているのだ!!
削れるところを探す宿題が出る。
しかも今日中!!

休憩時間にはパエリアをデリバリで頼んでくれた。

200908211608452.jpg

パエリア、初めて食べる。
うまーーーーーーーーーーーー!!

その帰り、バッグの中で、ミネラルウォーターのペットボトルの蓋が勝手に開いて、水がだだ漏れとなるアクシンデントが発生!!
うわああぁああぁ、DSがあぁぁあぁぁ!! ポメラ(藤井くんの)がああぁあぁぁあぁ!!
半月2巻と3巻もごわごわのべろんべろんにいぃぃぃぃ...

アニメの販促絵第一弾のラフがきた。
こ、これは...素晴らしいじゃないですか!
Na-Gaくんのキャラデザからさらにブラッシュアップされ、すげー親しみやすくなっている。
俄然やる気がでた。
頑張ってきたことがこれから報われようとしている...そんな期待感がひしひしとしている。
まさにわくわくだ。
生きててよかった、と思えるかもしれない。

木曜にはさらに一曲ボーカル曲を書いたあぁぁ!!
これでもう終わりでいいんじゃないかなあ。
もう全曲揃ったんじゃないかなあ。
ちょっと曲調がかぶってきてるし(汗
もうアニメに書き下ろす曲はこれでなくなったんじゃないかなあ。

で、明日からは三泊四日で東京でレコーディングです。
そこで、なんと...
メイキングのカメラが入ることになって、 おれも撮られるという事態に!!
ふわああぁぁあぁあぁぁーー!! どうしよう!?
声はラジオで慣れたけど、動いてる姿を撮られるのは初めてですからね。
しかも、雑誌の写真みたいに、初稿でこれはちょっと...とか言えないからですからね。
生のコメントは1テイクだからね...。
こええぇぇぇぇ...。
おれは完全に開発職で、ひきこもりのオタク丸出しの容姿をしているから、このままではやばい...と焦り始めた。
ビデオカメラで撮られるからには、オサレにして映らなくては失礼だと思ったわけですよ。
結果失敗だったとしても、オサレ努力しました!!という姿勢がね、必要だと感じたわけですよ。
でね、『髪を染める』という俺の中では大々的な作戦を思いついたんです。
これは、某こちらの業界では著名なアニメ監督さんが、特典映像で、髪を染めることによって作品を追うごとにどんどんあか抜けていくのを見て、ああ、これだ! おれもこうなりたい!と思ったわけです。
ちなみに34年、一度も髪の色をいじったことなどないです。
憧れでもあったんですよ。
でも、大きな不安があったんです。
それは...禿げが一気に進行する!!というものです。
で、検索かけて調べてみました。
やっぱみんな気になってんのね(汗
「毛染め 禿げ」で検索かけると、ごっそり出てくる。yahooの知恵袋でも出てくる。
でね、すげー対立を見せてるのね。
カラーと禿げは原理的に関係ありません、とい言い張る美容師も居れば、毛染めをしてごっそり毛が抜けたというのを何度か目撃してます、毛染めの薬で毛がぬけることは事実です、と言う人も居る。
どっちやねん!!
一応俺調べではパーマはNG。ブリーチも避けとけ。カラーなら髪に優しいからOK!みたいな感じ。
後は、変貌を遂げて会社に行くのが地味にイヤだ。
女性って不思議ですよね。
新しい服を着ていったり髪型を変えたりしたら、それに気づいて、触れてほしいんですよね?
人によっては、怒るらしい。なんで誰も気づいてくれないの!?的に。
おれはまっっっったく逆で、とにかく触れてほしくない。スルーしてほしい。
中学生の頃とか、おれ、新しいシューズを買ったら、まず庭で土かけて汚していたもん。
「お、おニューじゃん」と注目を浴びるのがすげーイヤで。
それまでもずっと履いてました感を必死で出そうとしていた。
服ならまだしも、髪なんて、それこそ染めそうもないキャラしてるのに、染めていったら、すげぇ反応されそうじゃん? そりゃ面と向かって言ってくる奴は少ないだろうけど、内心でどう思われまくるか考えたら、それだけで尻込みしてしまう。
いや、染めてる社員いっぱいいるけどさ。
特におれはね...殺伐としているから。殺伐としているキャラが染めてたら、なんか矛盾してるじゃん? おめー浮ついてんじゃん、殺伐感はどこいった、みたいな。
で、近しい人たちにも訊いてみてたんですよ。俺、髪染めようと思ってるだけどどう思う?って。
そうしたら、みんながみんな、黒髪が似合ってると思いますよー的な反応で、背中を押してくれる人がいねー!

でもね、このままダレた感じで、いつものおれっす、なんの努力もしてきませんでしたー、はいはい、いいレコーディングでしたねーとグズグズ感満載でコメントを残すわけにはいかない。
なので、勇気出して、染めてきましたよ...。
美容師さんも、すげー聞いてくるんですよ。本気ですか? 本当に染めるんですか? いいんですか? みたいな。
生まれて初めての毛染め...こうなりました。
 

200908222226324.jpg

どんなものでしょう...?
まだまだ黒いんですが、これからさらに日を追うごとに明るくなっていくらしい。

で、また体がしんどくなってきたああぁ...
過酷なレコーディングが始まるし...なんとかせねば...
もうマッサージとかそんなものじゃ取れないのね...。
なので、ずっと気になってた酸素カプセル、行ってきました。
でもね、これも不安があって、それは耳抜き。
例の、スキューバダイビングに必須な奴ですよ。
気圧の変化に伴って耳の中が膨張して痛くなってくるから、耳から空気を抜く、という行為。
これができないとダメらしい。耳抜きできない人はダメ、って書いてあるし。
そんなのやったことないよ!!
でも、行ってきた。 (最近のおれは果敢だなあ)
ブライダルヘアメイクを主にしている店なので、女性客で一杯の中を通される。
耳抜きは、唾を飲むことでできるので、飴を渡される。
礼儀正しい若い女性スタッフなのに、常に「飴ちゃん」と説明される。「こちらに飴ちゃんをご用意してあります」「そのような場合は飴ちゃんをお舐めください」とか。大阪で飴を飴ちゃんと言うのは、おばちゃんだけだと思いこんでいたおれには大阪在住13年目にしてカルチャーショック!
そして、カプセルに閉じこめられ、気圧を上げられていく。
これ、閉所恐怖症の人もダメなんだよね。昔のおれだったら、絶対無理だっただろうけど、今はぜんぜん平気だった。逞しくなったものだ。
耳が痛くなってくる。
耳抜きなるものはさっぱりわからない。
10分後、気圧上昇が終わる。
耳は痛いまんま。耳つーか、耳の下の骨辺りが痛い。
大丈夫ですか?と聞かれるが、まあ痛くても我慢レベルだったので、大丈夫です、と答える。
でも痛みが治まらないから、飴ちゃんを試しに舐めてみる。
そうしたら、だんだんと緩和されていった。
横向きに姿勢を変えて、i-podを耳に装着し、いつも寝ているみたいにセッティング。
そこからは一瞬だった。
名前を呼ばれた時、まさかもう一時間経ってるとは思わなかった。爆睡していた。驚いた。
すごいお疲れだったんですね、と言われる。
気圧が下げられていく。
耳が解放されていくようだ。
カプセルから出た第一歩がよろめいて、スタッフに大丈夫ですか!?と心配される。
まあ、大丈夫。
その後、効果は実感できたかのアンケートを受けたのだけど、正直に「わからない」に丸をしておいた。
まあ、一回で効果があるとは期待していない。
自分の調べた中では安いほうなので、しばらく続けてみようと思う。
ほんと、この体のしんどささえなければ、おれは寡作でなくなるだろう。

殺伐ラジオのお便り、まだ間に合うようです。よろしくお願いします!!
明日からは戦ってくるぜぇ...。

2009年8月28日

開発日記其の五拾六

帰ってきました大阪に...
終わりましたよ...
三泊四日のレコーディング...

今から記憶を手繰りながら書きますが、果たしてどこまで覚えてるやら...

初日のスタジオは、メイキングのカメラが入るので、ものすごくいいスタジオを用意してくれた。
とにかくでけー!!

200908241239252.jpg

見てのとおり、ボーカルブースがすべてガラス張り!!
そしてすでに待機しているはメイキングカメラ班!!
おれの今回の最大の敵はこのカメラなのだ!!
そのために髪も染める決意まですることになっちゃったんだし、ちょっとはマシな格好をしなければとか、ただでさえ一日ボーカル2曲のディレクションというハードワークの中、さらなるプレッシャーをね、かけられたね(汗
麻枝さんの声はぼそぼそしてて聞こえないので、ということで、おれひとり隠しマイクを付けることに。
どーでもいいが、その後何度もいったお手洗いの音はすべて拾われていたのだろう。うん、どーでもいい。
カメラが入るので、ボーカルさんもメイク。3階にまた大きい待合室みたいなのがあってそこで行われていた。
午後1時。髪をアップにした岩沢役のボーカリスト、Mさん(以下岩沢さん)が降りてきて、レコーディングスタートである。
すでに岩沢もユイも、オーディション時点で完成していたので、あの時から変わっていないかどうか。そこがディレクションのポイントであった。
岩沢に必要なものは、歌の上手さはもちろんのこと、プラス人を惹きつける魅力が必要であった。
この岩沢さんの声はほんと、生まれ持っての資質のもので、真似しようとしても出ない。
岩沢しか出せない、歌えない唄声。
そんな声で紡がれていく、バラッド。
彼女の魅力が存分に振るわれる。
この曲は、ある回の重要な役割を担った曲なので、とにかく集中してディレクションする。
で、岩沢さんは、放っておくと間奏でアドリブでハミングを入れてくるので、それも採用。
とてもいい感じなので、イントロもアウトロも入れることに。これはアニメ版に反映されるかはわからんないけど。
設定上この曲は弾き語りなので、ハモやコーラスがない。
主旋律一本。
二曲目の録りが5時からなので、時間が空くなあ...と思っていたが、甘かった!!
きっかり5時までかかってしまった。たっぷり4時間の収録となった。
ちなみに今回も、ディレクションはいつもお世話になっている1st placeの村山さんである。
この人に任せておけば、おれは頭を縦か横に振るだけでいいという、ものすごい頼もしさ。
マニュピレーターは、こちらも作・編曲・ミックスからエンジニアまでこなす、Nさん。
この布陣はおれにとっては無敵である。
しかしいつもと違うのは、終始回り続けるカメラの存在。
「うわ、むっちゃ撮られてる」「うわ、むっちゃ真横きてるやん! なんて至近距離!」「うわ、おれさっきからなんも喋ってへん!相づち打ってるだけじゃん!!」「うわ、おれぜんぜん仕事してねー絵になってる!!」「しょんべんの音だけはじょぼじょぼ録れてまっせ、みたいに思われてないか!?」みたいな、プレッシャーをがんがんかけられつつレコーディングは続く。
この日はG'sマガジンの取材まで入っていて、録りが終わると、岩沢さんは、再び3階に戻り、取材を受けることに。
さらに、メイキング用のインタビューもその後行われる。
なんて忙しい日だ!!
次にスタジオに現れるはユイ役のOさん(以下ユイさん)。
おれがいきなり髪を染めたように、彼女もばっさり髪を切ってイメチェンを果たしていた。
とてもチャーミングになっていた。
午後5時過ぎ、二曲目レコーディング開始!!
まずAメロを歌ってもらったところで違和感。
...ありゃ? 上手くなってね?
余裕があるというか...
いやいや、ユイはそうであってはならない。
キャラを説明し、歌い直してもらう。
ユイさんは完全にロック畑の人で普段はもっと声量のある、ビブラートをがんがんに利かした歌を歌ってんのね。ユイというキャラにはとても繋がらないような。
それを落としてもらうんだけど、ユイさんはね、すごく大人なんですよ。22歳なんだけど。懐が深いのね。そういう自分の武器を削ぎ落とすことも、なんら厭わない。ディレクション通りにほいほいとやってくれる。
するとね、ちゃんとユイになるんだ。目を瞑れば、おれの中では、Na-Gaくんのデザインしたユイしか見えないんだ。すげー。
で、この曲はユイさんにとっては今回三曲レコーディングする中の一番の難題だったようで、振り返ると、確かに一番手こずっていたし、ディレクションチームも、結果的には二番目に苦労した曲となった。こちらはハモもあるので、計5時間半という長丁場になった。
なので、終わった後、すげーほっとするユイさん。やったー!と喜ぶ。
しかーし! 休む間もなく、メイクを直し、G'sの取材とメイキングのインタビュー。
うへー大変だー。
すでにこの時点で夜の10時半です。
で、ですねぇ...
ここからおれにも、待ち受けてるわけですよ...。
同じくG'sの取材とメイキングのインタビューが。
あのねぇ...
午後1時から10時間ぐらいディレクションを続けてきてて、しょーじきボロボロなんですよ...
夜も遅いから髭も伸びてるし、髪もぜんぜん整えてないし、櫛一本持ってないし、おれはメイクないし...
お手洗いの鏡に映った自分の姿はもうそりゃ哀れで...
あのですねぇ...
海外の人にも、He looks too coolとかHalf-gaijin?とか言われてるぐらいの奇跡的な写メをね(ありゃほんと光源の関係でたまたまだ)、前回アップしちゃったせいでね...自分でハードル上げちゃったけどね...
本物はぜんぜんイケてないですよ!??
そのへんに居る年齢相応のふつーのオッサンですよ?
はぁ...もぅ...これでインタビュー撮られるのかよ...と暗澹たる気分になりながら、すごすごとスタジオに戻り、またカメラを回されましたとも、ええ、惨めな姿のまま。
なんかすごく横道に逸れたりして、ぜんぶ収録されないんだろうな、という気がしながら、長々と喋った気がする。
インタビュアーさんが、最初ユイさんのAメロを聞いた時に、違和感を覚え、ちょっと青ざめたように止まっちゃったじゃないですか、ああいう時、麻枝さんは、今日の録りは中止! もう終わり!みたいに止めて帰ってしまうようなキャラなのかと思ってましたが、そうじゃないんでしょうか?みたいな質問がとても印象的で、おれはいやいやいや、そんなんじゃゲーム制作なんてチームワークが必要な仕事なんて長く続けてられませんよって答えて、その場にいた鳥羽プロデューサーに「おれって仕事相手としてはすごく仕事やりやすいほうですよね!?」と聞いて、同意を激しく求めた(鳥羽Pはぶんぶん頷いてくれた!)。これは自負するところでもあって、おれは絶対に、やりやすいはずなんだ。もちろん、もっとやりやすい相手はいると思うよ。でもね、作品クオリティを保ちつつ、折れる、ということに長けている(ってなんやねん)気がする。やりやすいよ!?
で、その後、G'sの取材。
さっき、メイキングで聞かれたこととほぼ同じことを聞かれるので、ほぼ同じことを答える。
 

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待合室にて、グロッキー状態のおれ。

関係ないけど、G'sさんでレポ漫画描いてくれているこもわたさんもこの日はずっとスタジオに居たんだけど、前回は美人だということをお伝えしましたが、改めて見るとスタイルもよくて再度びびる。身長168なんだよ? モデル並みじゃん!
どうしてレポ漫画なんて裏方的な仕事をしているのか謎だ...。あなたこそ、表に出るべきだ...と思った。彼女こそShe looks too beautifulですよ。
で、午前0時を回った頃に取材も一通り終わり、そこから...
 
主題歌の打ち合わせが始まるのであった!!
 
すげー難航していて、これは一度顔を合わせて話し合ったほうがいい、ということで、このタイミングでの打ち合わせとなったのだ。
みんな疲労困憊だったけどね、でもね、活路は見えた。
そして1時ぐらい。ようやく本日の行程が終了。
タクシーに乗り、ホテルにチェックイン。
実はこの日は昼も夜も食べていない。
差し入れのどらやきとクッキーをつまんだだけだ。
でもね、疲れすぎていて、まったく食欲が湧かないんだ。
ホテルの自販機にカロリーメイトが売っていたので、それを買って、部屋に入ったのだけど、一本食べただけで、気持ち悪くなった...。二本も入らない...。
後はシャワーを浴び、ビールを飲み、ライトノベルを読んで過ごした。
明日(正確にはもう今日)は、午後1時スタート。睡眠は十分に取れる。
なんとなくテレビをつけみたら浦沢直樹のドキュメントをやっていた。
なんて壮絶な創作人生だ...。
3時半ぐらいに就寝。

二日目!!
本日はカメラが入らないので、Nさんや村山さん繋がりのスタジオでレコーディング。

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何がすごいってね、ここの社長のコーヒーへのこだわりがすごい。
まず、何の予備知識もなく、出されたアイスコーヒーを飲んだんだけど...
なんだこりゃ!?
人生で一番美味かった。
おれはコーヒーにはミルクを入れてしまう派なんだけど、それがとても罪深い行為、蹂躙に思えるほど、なにを足してもいけない味。許されない味。
その後、同じように、ブラックではコーヒーは飲まない、そもそもコーヒー自体そんなに飲まないという岩沢さんに薦めてみたところ、うわ! お茶みたいにがぶがぶ飲める!と言って飲んでいた。
後で聞いた話では、その社長は外の打ち合わせでも、常に魔法瓶にマイコーヒーを詰めて持ち込むほど、コーヒー好きなんだそうな。
Nさんからその感想を伝えたら喜びますよ、と言われたので、人生で一番美味しいコーヒーでした!!と伝えておいた。
そして、二日目の一曲めスタート!
この曲だけは、オーディションの課題曲でもなかったため、まだ岩沢もユイも歌ってるバージョンは聞いたことがなかったのだ。
なので、俺が一番心配していた曲なのだ。ほんとにカッコイイ曲になるのか!? ダサくならないか? 歌いこなしてもらえるのか?等々...。
しかーーーーし!! 岩沢さんが声を吹き込んだ途端、すべてが吹き飛んだ!
カッケーーーー!!
岩沢さんの歌声も、もう俺の中では目を瞑ると、Na-Gaくんのデザインした岩沢が歌ってるようにしか聞こえないんだよね。完全にシンクロした。
ものすごい孤高感。なんていうと言葉は悪いかもしれないんだけど、ほんとにこの声を出せるのはこの人しか居ないんだ。
岩沢さんの三曲では一番スムーズにレコーディングが済んだ。つっても5時間みっちりかかってるけどね。
この曲はハモリがあるんだけど、岩沢さんは、なんと初めてハモったらしい。
というのも普段は岩沢さんは、ライブスタイルがピアノの弾き語りなんだよね。なのでレコーディング音源も弾き語りの一発録音。
しかし生まれて初めてハモッて、こんな上手く録れるものなのか...。すげー...。
そして夕方6時半から、ユイさんの2曲目レコーディングスタート!
この曲が一番早く彼女の手に渡ったたし、彼女自身も、一番この曲をたくさん歌ったらしい。
転調しまくるすげーーーーーーーーー難曲なんだけど、安定して歌いこなす!!
特に、サビのハモがね...すげー音が取りづらい。もう難解なパズルのようなんだ。
覚えてもらうためにガイドメロを流した時点でおれから思わず漏れた言葉が、
「むずかしっ」
すかさずユイさんから「先生! 誰が作ったんですか!」とツッコまれる。
でもね、ここがユイさんのすごいところで、その難解ハモをほぼ一発で取ってみせるんだ。すげ~!
Bメロからハモリもダブリもおっかけもある手間のかかる曲なんだけど、4時間で終了! ここまでで最短記録!
この日は、G'sさんでリトバスの4コマを連載している笹桐ゆうやさんも見学にスタジオにいらっしゃったんですよ。(ちなみに、原作:麻枝准と表記されてますが、最初の1,2回以降は彼ひとりでネタから考えています。絵が可愛くてギャグで笑える4コマ漫画書きとしては、天才的です)
レコーディングには初めての立ち会い。どうですか?と聞いてみると、「こんなに細かく切り張りしているとは思いませんでした」というとても笹桐さんらしい忌憚のない感想が返ってくる。はい、そうなんです。幻想をぶちこわしてごめんなさい。
で、このAngel Beats!の企画の立ち上げ人のひとりでもあるG'sの編集さんのなごやんさんとも久々にお会いして、終わったら、食事しましょうということになり、笹桐さんをホテルにチェックインさせるため、一度別れることに。
レコーディングが終わったのは夜の11時ぐらい。
 

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二日目を終え、グロッキー状態のおれ。

そこから鳥羽さんと一緒に移動し、なごやんさんと落ち合う。笹桐さんがいなかったのでどうしたのかと聞くと、ホテルでへばって、もう今日は動けないとのこと。うむ、それが普通の人なのだ。入る店もなかなか見つからないような平日の深夜、今ここに居る人間のほうがおかしい。
バーに入って、三人で飲む。
おれは山崎。うめー。高いけど。
ウチの新人音楽マンのアホ話をしながら盛り上がっていたのだけど、ここでとんでもない企画が生まれてしまった。
おれが発案なのだけど、ふたりとも大爆笑。ノリノリになる。
翌日訪れたG'sの担当のコアラさんに「あの企画の話聞きましたよ。面白いので絶対実現させます!」と言わしめるぐらいのシロモノ。
きっとおれひとりが「こいつアホだ...」と思われるのだろう。G'sの年始号ぐらいに期待していてください。
相変わらず食欲はなく、この日の食事は鳥羽Pの差し入れのいなり寿司(大好きなのでなんとか喉を通った)と、バーでつまみとして食べたウィンナーとピッツァ。絶対痩せるな...と思った。(実際大阪に戻ってきて体重を計ったら68キロ、体脂肪率15%、肉体年齢29歳という脅威の数字がはじき出されてしまった)
ホテルに戻ってきたのは午前3時ぐらい。またライトノベルを読んで、4時過ぎに就寝。

はい! 最終日です!
本日は2時スタート。
岩沢さんの三曲目から録りが始まる。
ここにきて、最難関がきたーーーーーー!!
今回一番の山です。
この曲は、アニメでは一番最初にかかるガルデモ曲なんです。
なので、おれのディレクションも一際厳しい。
いつもは村山さん任せで、ほぼ真っ白なおれのA4用紙の歌詞が、テイクの数字で埋め尽くされていく。
そもそも、普段の岩沢さんは、ロックは歌わないのね。
ソウルやブルースの人なんだよね。
ロックを歌わせてること自体に無理があるのだけど、この曲はね、キーが高いのね。
つっても、最高音はD#なんだけど、後にユイさんが指摘する通り、おれの曲って、高いところが続くのね。それはそれはサディスティックな曲なんだよね。
この曲についていつも思うのは、「あなただって疲れてるでしょ」という歌詞が後半に出てくるのだけど、そこで「疲れてるのはおまえだろ!!」というツッコミを入れたくなるところなんだよね(汗
ディレクションチームも疲れてるし、ほんと、他人を気遣ってる余裕なんてまったくないのね。
今まさに、俺たちが疲れてるんだよ!!と。おれはおれの歌詞に言いたくなるんだよね(苦笑
曲のタイトルまでみごとに皮肉になってて、苦労するソングなんだよね(笑。後で知って笑ってください。
午後2時開始で、ようやく主旋律が終わったのが7時。
 

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その後、現実逃避するようにダンゴムシのように身を丸くするグロッキー状態のおれ。

そこから約一時間の休憩を挟むことに。
で、おれはね、最終日なので、岩沢さんユイさんのおふたりのボーカリストとコミュニケーションを取っておこうと思って、ブースを抜け出して、話すことにしたんだよね。
たまたまなんだけど、ふたりとも22歳という若さなんですよ。
おれが34歳なので、ちょうど一回り違うんですよ。
果たして会話は成立するのか!? おれ、そんな若い子と話したことないぞ!? そもそも同僚ともほとんど口利かないってのに。
これはおれの果敢なる挑戦でもあったんです。
最初は岩沢さんとふたりで話してたんだけど、時間が押してるせいで、ユイさんもスタジオ入りしちゃって、結局は三人で話してた。
まずは感じたのは、ジェネレーションギャップではなく、業界ギャップですね。
あのね、おれたちオタクな人間とはぜんっぜん違う人生を送ってきてます。
まあ、そっちのほうがマジョリティなのかな(苦笑
ふたりともね、22歳では考えられない人生経験を積んできてます。
まず、岩沢さん。
彼女はすげー悩んでる。
見えない未来に怯えている。不安を抱きまくっている。否、不安オンリーみたいな。明るい未来をまったく考えられない子なのね。
なので、俺は俺のこの13年間の創作人生を語ってやった。
おれがいかに、『あること』に徹してきたかを。
そして、ようやく今この歳にして、メジャーな陽の当たる仕事を得られたか、ということを。
そうしたら、彼女はとても反省していた。
これはもう年の功で、経験則はあるし、オッサンに語らせたらね、わかってくれると思って語ったんだ。
そういうことなんだよ。
どーでもいいけど、岩沢さんは、九州弁でしかも地声が低いので、とても22歳とは思えなくて、おれと話してるところにユイさんが「ちょっといい?」と割って入ってきて、岩沢さんが「なに?」と聞くと、「めっっちゃおばさんなんだけど」ってぶっちゃける(笑。「そうだよ、オッサンとかにむっちゃモてるよ!?」みたいに言い返すし。それはそれは微笑ましい同い年のやり取りだった。
で、ユイさんのほうはね、こっちは無茶苦茶精神年齢が高いんだ。
それはね、彼女を取り囲む環境が急速に育てたものなんだと思うし、そういう環境を引き寄せたのは彼女自身の魅力であるから(おれも引き寄せられたひとり)、いっちまえばね、成功するべくして成功する人なんだよね。
なんといっても彼女の一番の才能はね、努力できる才能。彼女も自信がなくて不安で不安で仕方がない。でも、努力することでその不安を打ち返す最強の鎧を身につけることができる才能を持っている。
歌手殺しの名を欲しいままにしている(苦笑)おれの中でも超難度級を誇る、その苦労するソングをね、二日目にさらりと歌ってしまうのもね、それは歌の才能があるからじゃなくて、努力する才能があるからなんだよね。と言っては、失礼かもしれないんだけど。この子は、歌の才能より、頑張る才能があるんだよね、おれから言わせてみれば。
だから、歌じゃなくても、絵を描くことが好きになっていても、小説を書くことが好きになっていても、おれは同じ高みまでいける子だと思う。
で、おれが質問する側だったのだけど、岩沢さんがふとユイさんに一番の己の不安、「目標はなに? どんなふうになりたい?」ということを聞いたんだよね。(岩沢さんはそれがないから恐くて仕方がないのだ)
ユイさんは「人を感動させたい」その一言だった。
おれはレコーディング終了後に、「達観してるよね」と言って「達観? どういう意味ですか?」と聞かれたのだけど、ようはそういうこと。
22歳にして、達観できてる子なんてそうそういない。
おれの22歳なんて、どんなものだったかね。
「すでにおれの28、29歳の頃の考え方をしてるよ」と言っておいた。
成功への近道を、ユイさんは選べる子なんだよ。
それは、おれのディレクションで、簡単に自分の本来の歌い方を一端置いておいて、別チャンネルで考えられるような、そういう柔軟な思考。
ただ、おれは忠告はしてあげなきゃと思って、ユイさんには言ったんだよね。
今回の仕事は、きみの重い十字架になるかもしれない、と。
きみのライブには今後、ユイの影が延々とつきまとうかもしれない。
ユイの曲をやらないとお客さんは喜ばないかもしれない。
バンドのオリジナルをやると、空気読んでないみたいになるかもしれない。
でも、きっとそれも踏まえて、最終的に自分で今回の仕事をやると決めたんだよね?と。
そう言うと、ユイさんと岩沢さんは、いやいや、こんなチャンスを頂けただけでも、と言ってくださったのだけど。
でもね、おれから言わせると、おれはおれ自身が13年間頑張ってきたことによって、きみたちふたりのようなものすごい可能性を秘めたボーカリストに自分の曲を歌ってもらえる機会に恵まれたんだよ? こっちのほうが、出会えたんだよ? と言いたかった。
おれという立場と、ふたりには絶対的な距離があったんだよ? それをわかってるかな?
それを飛び越えたのは、たぶん、それはおれの努力なんだ。それは自信を持ちたい。
だって、彼女たちは、坂本真綾も知らないし、菅野よう子も知らなかった。
おれがゲーム業界でどれだけ足掻こうが、接点など作れやしなかった。
けど、アニメという国が誇る文化で、おれ自身が脚本を書いて、音楽までプロデュースできるという地点まで到達して、ようやくふたりと出会えた。
そういう、おれの13年の努力の上に起こりえた、奇跡的な出会いなんだよ?
それをふたりはきっと知りえない。
おれのほうがね、今、幸運を掴んでるだよ。幸せなんだよ。
わかんないでしょ?
まあ、そういうことは、おれの心の中に閉まっておく。
夜8時、レコーディング再開。
夜9時に、岩沢さんの、三日に渡るレコーディングが終了。
おれは自信を持てない彼女に言ってあげたいことがあって、それを最後に言ってあげた。
「岩沢を歌えるのはきみだけ。代わりはいない。その歌声は誰も持っていない。それだけは自信を持って」と。
ほとんど初めてのレコーディング。三日間の壮絶な日々が走馬燈のように駆けめぐったのだろう。
彼女は泣いた。
なぜ、今メイキングのカメラがいない? ホワーイ?
彼女の頭を撫でてなぐさめているおれがどうして撮られていない? ホワーイ?

またどーでもいい事実が発覚。
22歳同士でシンパシーを感じ合っていたふたりは、なんと、岩沢さんのほうが早生まれで、学年では一個上だったのだ!!
「じゃ、今後岩沢さんって呼んでね」とか「敬語使ってね」とか、まるでコントのような設定に!!

はい!! ラストです!!
ユイさんの三曲めです。
これは、主題歌のカバーなんです。
ディレクションの村山さんには「まあ、カバーなんで、彼女のスタイルでやってもらいましょう。気軽にいきましょう」と伝えてあったのだけど...
ごめんなさい!!!
むっっちゃディレクションしました!!
で、これは実に不思議な事態なんだけど、オリジナルより先にカバーを録ってしまってんのね(苦笑。
なんて現象だ。ありうるのか(苦笑。
ほら、主題歌はまだアレンジ段階だから。
でね、自分で言うのもなんだけど、主題歌だけあって、曲がいいのね(爆
あー、いい曲だわー、と客観的に聞いてた。
だからこそ、厳しいディレクションになっちゃったんだよね。
一番の高みを目指してしまった。
でも、ほんとユイさんの大人具合には参るね。
おれもそうなんだけど、一次的にプライドを捨てることができる子なんだよね。
それは強みだ。その初心は忘れるな。
表情付けがすごく上手い。歌詞のニュアンスも掴んで、疲れてるところでは疲れてる声を出すし、元気なところでは弾ける。
カバーでこの出来では、本家がプレッシャーではないのか、と思える出来になった(汗。
あのね、テレビでは流れないんだけど、ラジオでもいってた4つめのメロディ。ここが必聴なので、是非、CDで聴いてください。おれの歴代の曲の中でも、屈指のDメロだと思う。ユイさんはその表情付けがすごくいいんだ。
そして収録時間、ハモ込みで、3時間半という、この三日間で最速のレコードが叩き出されました。
基本、ボーカルさんに指示をする時に押すトークバックスイッチは村山さんが押して、村山さんがおれの意志を伝えるのだけど、最後のトークバックだけは、村山さんは、「どうぞ」とおれに譲ってくれる。なんて空気を読む人だ!
ボタンを押し、おれは言う。
「お疲れさまでした、これにて......終了です!!」
「やったー!!」と弾ける声。
全日程終了。
一日二曲というハードなレコーディング、その激動の三日間が終わったのだ...。
ユイさんもレコーディング経験が少ない中で、歌手殺しの異名を取るおれの難曲をこのタイトなスケジュールの中でよく歌いきってくれたものだ。
最後に、ユイさんにおれの曲を録り終えた感想を聞いてみる。
「もっと簡単な曲にしてください」と笑って答えられる。
ほかに愚痴は?と聞くと、
「愚痴なんかないです。こんな高い曲なんて歌ったことないし、それが歌えるという力を引き出してくれたこともすごく嬉しかったし、楽しかったです」と答えてくれる。
最後に、これからビッグになって、ムジカや音楽と人とかでインタビューを受けることがあったら「麻枝さんに見出されて、今のあたしが居ます」と答えてね、とだけジョークで伝えておいた。
「尊敬する人とかですね! わかりました、ははは!」と笑って答えてくれた。

以上、レコーディングレポでした。

最後に。
この激動の三日間で、一番心に残ったのは、ふたりが休憩中に、一番苦労するソングを一緒に歌っていた風景だった。
片方が主旋律を、もう片方がハモリを練習していた。
物語的にはありえない風景なんだよね。ふたりがハモリ合うなんて。
笑いながら、「今度は逆いこっか」と入れ替わる。
もちろんふたりとも歌が上手いし、それはプロスペックで完璧なのだけど。
そのシーンだけは、22歳等身大のふたりの可愛らしい女の子が居て、ふたりは今回の仕事で初めて出会ったにも関わず、おれの曲で通じ合っている。その風景に、微笑ましく思い、もう二度と訪れないかもしれないその無邪気な姿におれはひとり、泣きそうになった。
それは本当に無垢で、かけがえのない風景だったから。
 
 

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